飲食店はキャッシュレスを導入することで、業務効率化や集客効果、顧客満足度向上などが期待できます。実際に導入する際には、コストや客層も意識しておくことが大切です。
本記事では、キャッシュレス導入が飲食店にもたらす5つのメリットや、選ぶ際の比較基準を解説します。
飲食店でキャッシュレス化が進展
近年、飲食店におけるキャッシュレス化が進んでいます。ここでは、キャッシュレスの概要を説明した後、消費者がどれほどキャッシュレス化を希望しているのか、そして現在どれくらいの飲食店でキャッシュレス化が進んでいるのかを解説します。
決済方法ごとの導入率や、スマートフォンを用いた決済方法の種類については以下の記事も参考にしてください。
キャッシュレスとは
経済産業省では、キャッシュレスを「お札や小銭などの現金を使用せずにお金を払うこと」と定義しています。主なキャッシュレス決済手段は以下の4点です。
クレジットカード
デビットカード
電子マネー
スマートフォン決済(QRコード決済など)
クレジットカードは商品購入やサービス利用後に請求されるため「後払い」、デビットカードは銀行口座から即座に引き落とされる「即時払い」、電子マネーは事前にチャージしてから支払う「前払い」にそれぞれ分類されます。
スマートフォン決済は、利用するアプリによって支払うタイミングが異なるものです。
キャッシュレスの種類や取り巻く環境についてさらに詳しく知りたい方は、以下の記事も参考にしてください。
多くの消費者がキャッシュレス化を希望
2019年に日本政策金融公庫が実施した調査では、飲食店での支払いにできるだけキャッシュレス決済を利用したい、と回答した割合が過半数を占めています。
また、普段の朝食や昼食、あるいは夕食のときに「現金のみで決済する」と答えた割合が37.1%であるのに対し、「現金以外で支払うことがある」は60.5%でした。
さらに、飲食店でキャッシュレス決済が使えずに不便と感じた割合は、スマートフォンのアプリで50.6%、商業系カード型電子マネーが44.1%、クレジットカードが40.7%です。
出典:日本政策金融公庫「飲食店でキャッシュレス決済を積極的に利用したい消費者が5割」
各調査データから、一定数が飲食店でキャッシュレス決済を使えないことに不便を感じており、キャッシュレス化を希望する声が多いことがわかります。
飲食店における導入率は既に8割超
既に、多くの飲食店でキャッシュレス決済が導入されています。経済産業省が2021年に全業種の事業者に実施した調査によると、飲食店における導入率は85.4%でした。その他小売の88.3%に次ぐ数字であり、回答した全事業者の導入率(72%)を上回っています。
ちなみに、キャッシュレス決済手段ごとの飲食店における導入率は、クレジットカードが58.3%、交通系電子マネーが33.2%、非交通系電子マネーが32.8%、コード決済が68.4%でした。
キャッシュレス導入による飲食店のメリット5つ
キャッシュレス導入による飲食店のメリットは主に5つです。
集客や客単価の増加につながる
感染症対策になる
業務効率化を図れる
防犯対策になる
顧客管理がしやすい
ここでは、各メリットについて詳しく解説します。
キャッシュレス全般における消費者側と事業者側のメリットをそれぞれ知りたい方は、以下の記事も参考にしてください。
キャッシュレス導入で事業者にもメリット!導入時の注意点も紹介
1. 集客や客単価の増加につながる
キャッシュレス化は、飲食店の集客につながる点がメリットです。2019年に日本政策金融公庫が実施した調査からわかるように、一定数がキャッシュレス決済を使えない飲食店に不便を感じています。
自店でキャッシュレス利用が可能であることをアピールできれば、新規顧客の来店につながるでしょう。
またキャッシュレス決済だと、利用客は手持ちの現金が足りるかどうかを心配せずに注文できます。いつもより注文量が増え、客単価アップも期待できる点もメリットです。
2. 感染症対策になる
現金はさまざまな人の手が触れるものであるため、感染症が流行すると受け渡し時の感染リスクが懸念されます。その点、キャッシュ決済だと人の手に触れる機会が減るため、感染症対策になる点がメリットです。
キャッシュレス決済の中でも、特に電子マネー決済やスマートフォン決済は接触機会を低減できます。また、クレジットカードを利用する際には、予約時に顧客がクレジットカード情報を入力しておくだけで当日のお会計が不要になるテーブルチェックの「コンタクトレス決済」が効果的です。
3. 業務効率化を図れる
現金決済の場合、会計時に顧客と従業員間で現金の受け渡しが発生します。キャッシュレス決済では現金受け渡し作業がなくなるため、数え間違いによるトラブルや従業員にかかる負担を減らして業務効率化を図れる点がメリットです。
会計のスピードがアップすれば顧客の待ち時間が減るため、結果的に回転率や顧客満足度の向上にも繋がります。
4. 防犯対策になる
売上代金を飲食店内で保管する場合、窃盗犯や強盗犯に盗まれる盗難リスク、従業員による横領リスクなどが懸念されます。飲食店をキャッシュレス化すれば現金の取扱量が減るため、保管する現金が少なくなり、防犯対策になる点がメリットです。
さらに、現金管理業務にかかる人件費や銀行に現金を持ち込む手間なども省くことができます。
5. 顧客管理がしやすい
飲食店における顧客管理とは、料理を注文して代金を支払った顧客に関する情報を一元管理することです。キャッシュレス決済では、会計時に利用代金や顧客属性などの情報をまとめて収集できるため、顧客管理しやすい点がメリットです。
各年齢層の売れ筋メニューを把握してマーケティングにいかせば、顧客満足度の向上や集客にもつながるでしょう。
キャッシュレス導入による飲食店のデメリット3つ
キャッシュレス導入でいくつものメリットが期待できる一方で、いくつかのデメリットも存在します。利用者や顧客にとってのデメリットは以下のとおりです。
不正利用の可能性
一部の人は使いにくい
利用できない店もある
また、キャッシュレス導入による飲食店のデメリットとしては、以下の点が挙げられます。
入金サイクルが長くなる可能性がある
決済手数料がかかる
導入にあたって初期費用が発生する
導入前に、あらかじめ3つのデメリットを理解しておきましょう。
1. 入金サイクルが長くなる可能性がある
現金決済の場合、会計時に売上代金が手元に入ります。一方のキャッシュレス決済では、決済から一定期間が経過した後に入金となることが一般的であるため、入金サイクルが長くなって資金繰りに影響する可能性のある点がデメリットです。
入金になるまでの期間は、各決済事業者によって異なります。必要なときに現金が足りなくなることがないよう、導入するキャッシュレス決済サービスの入金サイクルをあらかじめ確認しておきましょう。
2. 決済手数料がかかる
キャッシュレス決済を導入すると、決済ごとに発生する費用(決済手数料)がかかる点もデメリットです。決済事業者ごとに手数料率が定められており、飲食店側は決済金額の数%を決済事業者に対して支払います。
なお、2021年に経済産業省が実施した調査では、飲食店でキャッシュレス決済を導入しない理由として最も多かったのが「手数料が高い」でした。
出典:経済産業省「キャッシュレス決済 実態調査アンケート集計結果」
3. 導入にあたって初期費用が発生する
決済手数料以外に、キャッシュレス導入時に専門端末の導入費用といった初期費用がかかる点もデメリットです。どの決済事業者を利用するかによって初期費用は異なります。
専用端末の価格は数千円〜数万円が相場です。工事が必要な場合は、初期費用だけで100万円近くかかるケースもあります。
ただし、顧客に紙のQRコードを読み取ってもらう形式であれば、基本的に初期費用が発生しません。
飲食店が導入時に比較すべき3つの基準
キャッシュレス決済には、クレジットカードやスマートフォン、電子マネーなどさまざまな手段があり、提供している事業者の数も少なくありません。飲食店が導入する際には、以下の点に注目して選ぶことが重要です。
客層にあっているか
機能は充実しているか
コストは予算内におさまるか
3つの基準について、詳しく解説していきます。
1. 客層にあっているか
キャッシュレス決済の手段を検討する際には、各店でターゲットにする客層にあっているかをチェックするようにしましょう。客層にあわせて、決済方法を選択することが重要です。例えば、顧客の年齢層が高めであるにもかかわらず、決済手段をスマートフォンに限定してしまうと利用機会が減少してしまうことが予想されます。
また、客単価に合わせて決済手段を決めることもポイントです。経済産業省の資料によると、客単価1,000円未満の店におけるクレジットカード導入率が36.5%であるのに対し、客単価5,000円〜1万円未満では74.0%でした。
出典:経済産業省「キャッシュレス決済 実態調査アンケート集計結果」
2. 機能は充実しているか
決済機能以外の機能が充実しているかどうかも見極めるようにしましょう。例えば、コンタクトレス決済サービスを提供しているテーブルチェックには、以下の機能が備わっています。
予約受付
キャンセルプロテクション
顧客管理
電話予約を24時間自動受付する「みせばん」を利用すれば、繁忙期で電話に出られない場合に自動応答して予約受付が可能なため、予約を取りこぼしません。
また、キャンセルプロテクションは予約時にクレジットカード情報を取得しておくことで、ドタキャンが発生しても確実にキャンセル料を取得できる機能です。
さらに、来店履歴や注文内容に加えてお好みやアレルギー、誕生日や記念日などを収集し、より効果的に顧客管理できます。
3. コストは予算内におさまるか
キャッシュレス決済を導入すると、初期費用や決済手数料などの各種コストがかかります。金額は決済手段や決済事業者によって異なるため、店の営業利益に影響を与えないように、コストが予算内におさまるようなサービスを選びましょう。
飲食店にキャッシュレス導入して集客しよう
多くの利用客が飲食店におけるキャッシュレス化を期待しています。キャッシュレス導入による飲食店側のメリットは、集客アップや業務効率化、感染症対策などです。
ただし、導入にあたってはコストがかかるため、予算内におさまるような決済サービスを選ぶようにしましょう。